
🇯🇵 日本語: テパリービーン
🇬🇧 English: Tepary Bean, Tepari
🔬 学名: Phaseolus acutifolius A.Gray
🌿 科名: Fabaceae
🌍 O’odham: bavi, bawĭ, bafv, pavi
🌍 Mexican Spanish: tépari, escomite, escumite
Tepary bean は Phaseolus 属の独立した栽培種であり、common bean(Phaseolus vulgaris)に植物学的に近縁だが、その品種ではない。
Phaseolus 属で栽培化された5種の一つであり、高温と乾燥への適応性が特に高い豆類作物の一つでもある。自然分布域は、米国南西部からメキシコ北部・西部に広がり、ソノラ砂漠も含まれる。
Tepary bean は、ソノラ砂漠の先住民族、特に Tohono O’odham と Akimel O’odham / Pima にとって、文化的・食文化的に非常に重要である。
歴史的には、トウモロコシ、カボチャ、その他の乾燥に強い作物とともに、地域の農耕体系を支える主要作物の一つだった。現在もアリゾナ州やメキシコ北西部の Indigenous cuisine で重要な位置を保っている。
現代農学でも、tepary bean は耐暑性・耐乾燥性の高さから再び大きな注目を集めている。
乾燥地域向けの独立した作物として研究されるほか、Phaseolus vulgaris の育種における耐性遺伝子源としても利用が検討されている。
この記事は現在、一部未完成のため、内容を随時追加・更新しています。
Phaseolus acutifolius は、メキシコおよび現在の米国南西部に由来する。ゲノム研究と集団研究では、栽培 tepary がメソアメリカの野生系統から成立し、早期に栽培化された後、地域ごとの栽培集団へ分化したことが示されている。
初期栽培化の中心地として最も有力なのは、ソノラ砂漠と密接に結びつくメキシコ北西部である。
FAO は、メキシコの Puebla から出土した約 5000年前の Phaseolus acutifolius の考古学的資料を紹介している。米国南西部では、メキシコからさらに後の時期にこの作物が広がったことが考古学的に確認されている。
そのため、栽培化の年代を一点に固定するより、約4000~5000年にわたる栽培史をもつと表現する方が適切である。
ソノラ砂漠の先住民族の間では、この作物は現代の植物学名が成立するはるか以前から、長期間にわたって継続的に栽培されてきた。
名称の由来
tepary という名称には、複数の語源説がある。
FAO は、Tohono O’odham 語の t’pawi と関係する可能性を挙げ、これを「これは豆である」という意味に解釈している。
一方、歴史言語学的資料では、メキシコ北部でかつて話されていた Eudeve 語の tépar / tépari という形も記録されている。
そのため、現代英語の tepary を単一の O’odham 語だけに由来すると断定するのは適切ではない。
Tohono O’odham では、tepary bean の一般名称として bavi が記録されており、英語表記には複数の転写形がある。
yori muni / yorimuni という名称も文献に見られるが、これはメキシコ北西部の地域的な言語伝統に属する名称であり、一般的な英語の同義語ではない。
生活型:一年生草本植物
染色体数:2n = 22
受粉様式:主に自家受粉
生育型:叢生型、匍匐性、またはつる性
栽培される叢生型の草丈:通常約30 cm
匍匐性および野生型のつるの長さ:数 mに達することがある
種小名 acutifolius は、「尖った」と「葉」を意味するラテン語に由来し、特徴的な小葉の形に関連する。
葉は三出複葉で、多くの Phaseolus vulgaris 系統と比べて、小葉が明らかに細く先が尖ることが多い。
花は小さく、白色または淡色。
莢は比較的小さく、通常数粒の種子を含む。
栽培型は比較的コンパクトな叢生型または匍匐型が多いが、野生型では長いつるを形成することがある。
Kew は現在、種内に以下の2変種を認めている:
Phaseolus acutifolius var. acutifolius
Phaseolus acutifolius var. tenuifolius
以前は栽培される広葉型を var. latifolius として区別することが多かったが、現在 Kew ではこの名称を var. acutifolius のシノニムとして扱っている。
乾燥・高温への適応
Tepary bean は、栽培される Phaseolus 属の中でも特に耐暑性と耐乾燥性に優れた作物の一つである。
主な適応特性:
• 発達した根系と、土壌深層の水分を利用する能力
• 比較的小さい葉面積
• 生育と種子形成の間で効率的に水分を配分する能力
• 水分ストレス下でも光合成活性を維持する能力
• 多くの系統で短い生活環
• 高温およびアルカリ性の砂漠土壌への高い適応性
一部の tepary 系統では、乾燥条件下でも、より水分節約型の common bean 系統より気孔が長く開いた状態を保ち、光合成とバイオマス蓄積を継続できる。
ただし、近年の研究では tepary と Phaseolus vulgaris の双方に大きな変異があることが示されている。そのため、tepary 全体を単純に「anisohydric」、common bean 全体を「isohydric」と対比するのは適切ではない。
一部の系統は、年間降水量400 mm未満の地域でも栽培できる。短い夏季モンスーンを効率よく利用し、播種後およそ 60~120日で成熟することが多い。
分布と栽培
歴史的な栽培中心地は、ソノラ砂漠とその周辺地域である。
• アリゾナ
• ニューメキシコ
• ソノラ
• チワワ
• メキシコ北部・西部のその他の地域
伝統的には Tohono O’odham、Akimel O’odham / Pima、Cocopah、Yuma / Quechan、Yoeme / Yaqui など、米国南西部とメキシコ北西部の先住民族によって栽培されてきた。
Native Seeds/SEARCH は、これらの文化に由来する多数の地域 landraces を保存している。
栽培域はその後、メキシコを南下して中央アメリカまで広がった。
20世紀には、アフリカ、アジア、オーストラリアの乾燥地域でも試験栽培や導入が行われた。アフリカの一部地域では、common bean が高温や水不足に耐えにくい条件で利用されている。
ただし国際取引量は依然として非常に少なく、信頼できる独立した世界生産統計はほとんど存在しない。
栽培衰退と復興の歴史
1920年代、Tohono O’odham の農家は年間約 150万ポンドの tepary beans を栽培していた。
1930年代には、機械化農業と灌漑農業の普及によって、伝統的な耐乾燥性作物の農業上の優位性が低下した。1950年代までには、tepary は地域の商業栽培からほぼ姿を消した。
1970~1980年代以降、Native Seeds/SEARCH などの団体が伝統的 landraces の収集、保存、再導入を始めた。
現在、Native Seeds/SEARCH のコレクションには、栽培型と野生型を合わせて約100点の tepary 系統が保存されている。
外観と主なタイプ
Tepary bean は、多くの一般的な Phaseolus vulgaris よりかなり小粒である。
100粒重は一般に 約10~18 gだが、landrace 間で大きな差がある。
種子の色:
• 白
• クリーム色
• 淡褐色
• 濃褐色
• 黄色
• 緑色
• 黒色
• 斑入り
世界共通の標準化された商業タイプ分類はなく、伝統的な地域 landraces が中心となる。
White tepary
白色系統は特に O’odham の間で広くみられる。
Native Seeds/SEARCH は、白色系統をやや甘味が強いと説明している。
白い種皮は一般に水を通しやすく、そのため濃色系統より短時間で調理できる場合がある。
Brown tepary
淡褐色および濃褐色の系統は、アリゾナやメキシコ北部の伝統的品種群に広くみられる。
風味は一般に、より土っぽく、はっきりしていると表現される。
Black tepary
希少な黒色 landraces は、より濃く色づいた種皮をもつ。
一部の系統を対象とした研究では、濃色の種子は白色系統より長い加熱時間を要する場合があることが示されている。
Tepary bean は、多くの風味が穏やかな市販豆品種よりもはっきりした固有の風味をもつ。
Native Seeds/SEARCH は、全体的な風味を濃厚でナッツのようと表現している。
白色系統は一般により穏やかで、わずかな甘みがある。
褐色系統は、より土っぽく、力強い風味をもつ。
適切に加熱すると、種子は形を保ちながら、しっかりした肉質感のある食感になる。
一方、つぶすとなめらかでクリーミーなピューレになるため、丸ごとの豆料理だけでなく、ポタージュ状のスープ、ペースト、ディップにも適している。
主な食用部分は成熟した乾燥種子である。
主な利用法:
• 茹でる
• 煮込む
• スープに加える
• 濃い豆の煮込み料理に使う
• 冷やしてサラダに使う
• ピューレにする
• ペーストやディップにする
• 炒る、または乾煎りする
• 粉または粗い粉状に挽く
歴史的な Indigenous foodways では、乾燥豆を炒ってから粉砕し、水と混ぜる方法や、穀物を主体とする食事にたんぱく質源として加える利用も行われてきた。
代表的な伝統的利用
Tepary には、cassoulet や fabada のような世界的に知られた単一の代表料理はない。
その重要性は、一つのレシピではなく、ソノラ砂漠の先住民族が築いてきた食文化全体にある。
Bavi|O’odham の伝統料理
茹でた tepary beans は、それ自体が伝統的な料理であり、スープや煮込み料理の基礎にもなる。
伝統的な食べ方の特徴は、豆そのものの風味を生かす比較的簡素な調理にある。
米国南西部のスープと煮込み料理
白色および褐色の tepary は、トウモロコシ、カボチャ、チリ、その他の地域の伝統食材と組み合わせて使われる。
現代の Sonoran cuisine・Native American cuisine
現代の地域料理では、tepary は次のような形で利用される。
• スープ
• サラダ
• pot beans
• ピューレ
• ディップ
• 付け合わせ
• hummus-like spreads の現代的アレンジ
こうした利用は、考古学的な食品を単に再現する試みではなく、現在まで続く生きた食文化の延長である。
乾燥 tepary beans は、選別してよく洗う。
浸水は一晩、約8~12時間が推奨される。
浸水後の水は捨て、新しい水を加える。
目安:
乾燥豆1:新しい水 約3
十分に沸騰させた後、火を弱め、弱い沸騰を保ちながらやわらかくなるまで煮る。
新しい白色 tepary では、一晩浸水した後の加熱時間について、Native Seeds/SEARCH は約90分を目安としている。
古い種子、一部の褐色系統、特に種皮のしっかりした濃色 landraces では、さらに長い加熱時間を要することがある。
Tepary は小粒だが、必ずしも common bean より早く煮えるわけではない。
Native Seeds/SEARCH では、販売している乾燥豆の中でも tepary は煮崩れしにくく形をよく保ち、他の多くの豆より調理に時間がかかる場合があるとしている。
Tepary bean は日本食品標準成分表に独立した項目として掲載されていないため、日本の公式栄養成分データはない。
成分値は landrace や研究によってかなり異なる。
国際的に利用されている資料の一例では、乾燥種子100 gあたり:
エネルギー:約353 kcal
たんぱく質:19.3 g
脂質:1.2 g
炭水化物:67.8 g
食物繊維:4.8 g
カルシウム:112 mg
リン:310 mg
より新しい複数の系統を対象とした研究では、たんぱく質含有量は一般に**約19~25%**の範囲で、遺伝子型によってはさらに高い値も報告されている。
そのため、単一の数値を tepary bean 全体の普遍的な栄養組成として扱うことはできない。
多くの Phaseolus 属と同様に、たんぱく質の主な制限アミノ酸は含硫アミノ酸、特にメチオニンとシステインである。
豆類をトウモロコシやその他の穀類と組み合わせることで、食事全体のアミノ酸バランスを改善できる。
生の tepary beans は食べてはならない。
生の種子からは、以下の成分が確認されている。
• レクチン
• トリプシン阻害因子
• フィチン酸
• タンニン
• サポニン
特にレクチン活性が顕著で、一部の tepary 由来たんぱく質は、common bean の phytohaemagglutinin と構造的に近縁である。
食品試料を用いた研究では、十分な加熱によってレクチン活性とトリプシン阻害活性の大部分が失活することが示されている。
そのため、tepary beans は浸水し、完全に火が通るまで十分に加熱する必要がある。 生のまま、未加熱の発芽豆、または半生の状態で食べてはならない。
Tepary bean に固有の特別な家庭調理上の毒素は確認されていない。主な問題は、生の Phaseolus 属豆類に共通する抗栄養性たんぱく質にある。
乾燥 tepary beans は、密閉容器に入れ、乾燥した涼しい場所で、直射日光を避け、高湿度や害虫から保護して保存する。
Tepary は長期保存によって種子が硬くなりやすい傾向がある。
古い種子は吸水しにくくなり、浸水時間や加熱時間が大幅に長くなることがある。
Tepary bean は現在、数千年前に砂漠の農耕民がこの作物を守り続けた理由と、ほぼ同じ特性によって再評価されている。つまり、他の豆類には暑すぎ、乾燥しすぎる環境でも収穫できる能力である。
Phaseolus acutifolius のゲノムはすでに、common bean の育種における耐暑性・耐乾燥性の遺伝資源として利用されている。また、一部の病害や害虫に対する抵抗性も、育種によって導入されてきた。
これは単なる「乾燥に強いインゲンマメ品種」ではない。Phaseolus acutifolius と Phaseolus vulgaris は、栽培化の歴史が異なる別種である。
比較ゲノム解析では、両種の栽培化過程で選抜を受けた遺伝子群も、多くの点で異なっていることが示されている。
Tohono O’odham の文化では、白い tepary と天の川との結びつきが伝えられている。
現在も受け継がれる文化伝統の一つでは、白い豆が天の川の明るい帯や O’odham の食物の起源と関連づけられている。
これは、その文化の担い手から切り離して扱える単なる考古学的伝説ではなく、現在も生きている文化伝統の一部である。
近代的な工業農業の発展によって tepary が一時ほぼ姿を消したのは、皮肉にも、その最大の長所が経済的な優位性を失ったためだった。
灌漑と機械化が地域に広がると、ごく少ない水でも生き残れる能力だけでは、小粒で、機械収穫に適しにくい草姿という不利を補えなくなった。
しかし、気候変動によって、この評価は再び逆転しつつある。
Kew Science — Plants of the World Online: Phaseolus acutifolius A.Gray
Kew Science — Phaseolus acutifolius var. acutifolius
J-GLOBAL — 米国南西部及びメキシコ北部のテパリービーン Phaseolus acutifolius の成分
農研機構 — インゲンマメとその近縁種テパリービーンのα-アミラーゼインヒビター
USDA NRCS — Plant Guide: Tepary Bean, Phaseolus acutifolius
FAO — Pulses and their by-products: Tepary bean
FAO — Neglected Crops: Phaseolus acutifolius
Bitocchi et al. — Beans Phaseolus spp. as a Model for Understanding Crop Evolution
University of Arizona Desert Laboratory — Desert Foods
Arizona State Museum — Early Agriculture Period
University of Arizona Press — Pre-Hispanic Occupance in the Valley of Sonora: Agriculture
Native Seeds/SEARCH — Tohono O’odham White Tepary Bean
Native Seeds/SEARCH — Tepary Beans
Native Seeds/SEARCH — Indigenous Tepary Beans
Native Seeds/SEARCH — Celebration of Tepary Beans
Native Seeds/SEARCH — Tepary Bean Recipes and Cooking Information
Native Seeds/SEARCH — Organic White Tepary Beans: Cooking Instructions
Mwale et al. — Breeding tepary bean Phaseolus acutifolius for drought adaptation
Sotelo et al. — Characterization of the nutritional potential of tepary bean grown in Mexico
Protein Concentrates on Tepary Bean as a Functional Ingredient
Antinutritional factors in protein fractions of tepary bean
Isolation and Partial Characterization of a Seed Lectin from Tepary Bean
Assessment of Genotoxicity and Cytotoxicity of Tepary Bean Seed Protein Extract
Innovative Pulses for Western European Temperate Regions: A Review
