タルウィ / Tarwi

🇯🇵 日本語: タルウィ
日本での別表記: アンデスルピナス、ルピナス・ムタビリス
🇬🇧 English: Tarwi, Andean lupin, Andean lupine, Pearl lupin
🔬 学名: Lupinus mutabilis Sweet
🌿 科名: Fabaceae マメ科
🌍 Español: tarwi, chocho, altramuz andino
🌍 Quechua: tarwi / tawri

タルウィは、アンデス地域で栽培される高たんぱくの穀粒豆類 Lupinus mutabilis の成熟乾燥種子である。
Lupinus 属の中で、南アメリカで独自に栽培化され、重要な食用作物へ発展した種である。
この点で、次の主要な地中海系栽培ルーピンとは大きく異なる。
Lupinus albus、シロバナルーピン
Lupinus angustifolius、ホソバルーピン
Lupinus luteus、キバナルーピン
タルウィは、特にペルー、エクアドル、ボリビアで重要な作物である。
エクアドルでは chocho という名称が最も一般的であり、ペルーやボリビアでは tarwi またはそれに近い地域名が広く使われている。
種子は非常に高いたんぱく質と脂質を含む一方、伝統的な系統には、強い苦味の原因となるキノリチジンアルカロイドも相当量含まれている。
そのため、伝統的な tarwi は、通常の豆のように単にゆでるだけではそのまま食べることができない。
食用にする前には、主としてアルカロイドを水中へ溶出させて除去する、debittering と呼ばれる特別な脱苦処理が必要である。
本項では、Lupinus mutabilis の成熟乾燥種子を対象とする。

この記事は現在、一部未完成のため、内容を随時追加・更新しています。

Lupinus mutabilis は、南アメリカのアンデス地域を起源とする。

近年の遺伝学的研究により、その起源は多くの古代穀粒豆類よりもかなり詳しく復元できるようになっている。

最も有力な野生祖先と考えられているのは、

Lupinus piurensis

である。

200点を超えるアンデス系ルーピンを対象としたゲノム研究では、tarwi はペルー北部で一度だけ栽培化された可能性が高く、特に現在のカハマルカ周辺が有力な地域と考えられている。

栽培型 L. mutabilis とその野生祖先が分岐した時期は、およそ 2600年前、すなわち紀元前650年頃と推定されている。

栽培化の過程では明瞭な遺伝的 bottleneck が生じ、その後、作物はアンデス地域へ急速に広がった。

すでに栽培化された tarwi の最古の明確な考古学的遺物は、ペルー中央部のマンタロ渓谷で発見されている。

その年代はおよそ 1800年前、すなわち西暦最初の数世紀に相当する。

したがって、現時点で確認されている考古学的資料は、遺伝学的に推定される野生祖先との分岐時期よりも新しい。

これは不自然なことではない。考古学で確認できるのは、偶然保存され、さらに発見された試料に限られるためである。

Tarwi は、インカ帝国が成立するはるか以前から栽培されていた。

コロンブス以前のアンデス農耕体系では、次のような作物とともに利用されていた。

トウモロコシ
キヌア
ジャガイモ
その他の高地作物

ヨーロッパによる植民地化以降、多くの地域で tarwi の重要性は低下した。

ヨーロッパ由来の農作物の導入、土地利用の変化、その後の商業的価値が高い作物への移行によって、tarwi は一部の伝統的農耕体系から押し出されていった。

それでも tarwi は、ペルー、エクアドル、ボリビアの地域農業の中で生き残り、現在では高たんぱく作物として再び注目を集めている。

Lupinus mutabilis は、マメ科 Fabaceae、Lupinus 属に属する。

主に一年生の草本植物である。

草丈は通常およそ

0.8~2 m

で、遺伝型、標高、栽培条件によって変化する。

茎は直立し、よく分枝する。

葉はルーピン類に特徴的な掌状複葉である。

花は茎の先端に総状花序を形成する。

花色の変異は非常に大きく、次のような色がみられる。

青色
紫色
青紫色
白色
桃色
二色咲き

この顕著な変異性が、種小名 mutabilis、すなわち「変化しやすい」「変異に富む」という意味の名称にも反映されている。

開花後には、表面に毛のある莢が形成される。

1つの莢には通常、複数の種子が入る。

種子は比較的大きく、丸みを帯びた形またはやや扁平な形をしている。

種子の色も非常に多様である。

白色
クリーム色
黄味を帯びた色
灰色
褐色
斑点模様
大理石状の模様
より濃い色素をもつもの

他のマメ科植物と同様に、tarwi は根粒菌と共生し、大気中の窒素を固定する能力をもつ。

Lupinus mutabilis の自然分布域は、南アメリカ西部に広がっている。

その範囲は、ボリビアとペルーから、エクアドル、コロンビアを経て、ベネズエラ北西部まで及ぶ。

栽培される tarwi は、主に次の国々に集中している。

ペルー
エクアドル
ボリビア

コロンビアやその他のアンデス地域でも、より小規模ながら利用されている。

Tarwi は主として高地農業と強く結び付いた作物であるが、「高地でしか育たない」と表現するのは正確ではない。

本種について報告されている標高範囲は、およそ

海抜1500~3800 m

である。

現代の一部の農学資料では、約4000 mまで栽培される例も報告されている。

ペルー

ペルーでは tarwi は主に山岳地域で栽培されている。

主な地域には次のようなものがある。

カハマルカ
ラ・リベルタ
アマソナス
ワヌコ
ワンカベリカ
アンカシュ
アヤクーチョ
フニン
パスコ
アプリマク
クスコ
プーノ

近年のレビューでは、栽培面積はおよそ 10,600 ha と推定されている。

エクアドル

エクアドルでは、この作物は主に chocho と呼ばれる。

主要な生産地域はアンデス山間部にあり、特に次の県で栽培されている。

Cotopaxi
Chimborazo
Pichincha
Bolívar
Imbabura
Tungurahua
Carchi

主要な生産地は、およそ 標高2700~3800 m に位置する。

近年の推定では、栽培面積は約 6000 ha とされている。

ボリビア

ボリビアでは tarwi は、主に Altiplano の寒冷地域やアンデス山間部の谷で栽培されている。

主要な地域は次のとおりである。

Cochabamba
La Paz
Potosí
Chuquisaca

典型的な栽培標高は、およそ 2500~4000 m である。

Tarwi は比較的やせた土壌や乾燥条件にも適応できるが、環境ストレスへの耐性は生育段階によって異なる。

若い植物は 約−2°C でも低温障害を受ける場合がある。

そのため、tarwi を単純に「耐霜性の高い作物」と表現するのは適切ではない。

成熟した tarwi の種子は、形態的な変異が非常に大きい。

形は通常、次のようなものがみられる。

丸みのある形
幅広い楕円形
ややレンズ状
適度に扁平な形

種子は、シロバナルーピン Lupinus albus よりも丸みを帯びて見えることが多い。

大きさは遺伝型によって異なる。

種子の色には次のようなものがある。

白色
クリーム色
淡黄色
灰色がかった色
褐色
濃褐色
斑点模様
大理石状の模様

一部の系統では、へその周囲に濃い色素沈着がみられる。

花色と種子色の多様性は、この種を特徴づける重要な性質の一つである。

Bitter forms

伝統的なアンデス地方の landrace と、現在栽培されている商業品種の多くは、依然としてアルカロイド含有量が高い。

これらは強い苦味をもち、食用にする前に必ず脱苦処理を行う必要がある。

Low-alkaloid forms

低アルカロイド型 tarwi の育種は、ペルー、ボリビア、エクアドル、チリ、ヨーロッパ各地で進められている。

初期の代表的な低アルカロイド品種の一つが、チリで育成された Inti である。

この品種では、アルカロイド含有量が約 0.0075% と報告されている。

しかし Inti は、害虫、病害、不利な気象条件に対して感受性が高かった。

そのため、低アルカロイド性と優れた農業特性を同時に備えた品種を作ることは、現在でも重要な育種課題となっている。

エクアドルの近年の育種プログラムでは、アルカロイド含有量が約 0.04% の実験系統も得られている。

一方、同国で現在広く栽培されている INIAP 450 Andino や INIAP 451 Guaranguito などの主要商業品種は、依然として bitter 型に属し、食用前に debittering を必要とする。

したがって、低アルカロイド型 tarwi はすでに存在するものの、伝統的な bitter 型を置き換えるまでには至っていない。

未処理の tarwi は、キノリチジンアルカロイドを多く含むため、非常に強い苦味をもつ。

適切に脱苦処理すると、味は大きく変化する。

調理済みの種子には、主に次のような特徴がある。

穏やかな豆の風味
ナッツのような風味
ほどよい土のようなニュアンス
わずかな自然な甘味

食感はしっかりしており、弾力がある。

加熱後の種子は、

一般的なインゲンマメほど粉質にならない
はっきりした弾力を保つ
わずかに歯ごたえのある、しっかりした食感をもつ

という特徴がある。

そのため tarwi は、特に次のような料理に適している。

冷たいサラダ
ceviche に似た料理
スナック
トウモロコシとの組み合わせ

処理後にも強い苦味が残っている場合は、アルカロイドが十分に除去されていない可能性を示す警告サインとなる。

Tarwi は、特にエクアドル、ペルー、ボリビアで強い食文化的伝統をもつ。

エクアドルの Chocho

エクアドルでは、脱苦処理した Lupinus mutabilis の種子は広く chochos と呼ばれる。

すでに調理、洗浄された状態で販売され、日常的な食品として利用されている。

Chochos con tostado

エクアドルを代表する tarwi の食べ方の一つである。

脱苦処理した chochos に、炒った乾燥トウモロコシを組み合わせる。

地域や料理のバリエーションによって、次のような材料を加える。

トマト
赤タマネギ
ライムまたはレモン
唐辛子
コリアンダー
塩

豚皮を加えるバージョンもある。

家庭でも屋台でも親しまれている日常的なスナックである。

Cevichocho / ceviche de chochos

脱苦処理した chochos を酸味のある調味液で和えたエクアドル料理である。

一般的には次のような材料が使われる。

タマネギ
トマト
柑橘類の果汁
コリアンダー
唐辛子
その他の調味料

名称は ceviche の調理法や味の構成に由来するが、この料理では魚ではなく豆類である chochos が主材料となる。

ペルーにも ceviche de tarwi と呼ばれる現代的な料理があるが、cevichocho として特に強い食文化的伝統をもつのはエクアドルである。

ペルー

ペルーでは tarwi は、次のような形で利用される。

サラダ
スープ
ソース
煮込み料理
スナック
その他のアンデス産食材との組み合わせ

処理済みの種子をすりつぶし、ペーストやさまざまな現代的食品に利用することもある。

Tarwi 粉

Tarwi は脱苦処理後に乾燥させ、粉末に加工することができる。

Tarwi 粉は、次のような食品の栄養価を高める目的で利用される。

パン
ビスケット
焼き菓子
パスタ類
その他の小麦粉製品

たんぱく質含有量が非常に高いため、食品のたんぱく質量を大きく高めることができる。

現代的な高たんぱく食品

Tarwi は、次のような食品の原料としても研究されている。

植物性飲料
たんぱく質濃縮物
たんぱく質分離物
肉代替食品
乳化食品
高たんぱくスナック

Tarwi のたんぱく質は、水分や脂質を保持する性質をもち、さらに乳化、起泡、ゲル形成などの食品加工上の機能性も備えている。

伝統的な tarwi の種子は、一般的なインゲンマメのように単純に調理することはできない。

主な目的は、種子をやわらかくすることではなく、苦味と毒性の原因となるキノリチジンアルカロイドを除去することである。

伝統的な bitter tarwi

基本的な処理手順には、次の工程が含まれる。

種子を選別して洗う
浸水させる
ゆでる
ゆで汁を完全に捨てる
新しい水で長時間洗浄、浸漬する
水を頻繁に交換する

伝統的な方法は地域によって大きく異なる。

方法によっては、ゆでた後に約 2~4日間 水にさらす。

さらに長期間かける場合もある。

歴史的には、次のような方法が利用されてきた。

流れる川の水
水路
水を何度も交換する容器

目的は、種子から水中へ溶け出したアルカロイドを継続的に除去することである。

一律の処理時間を設定できない理由

L. mutabilis のアルカロイド含有量は、次の要因によって非常に大きく変化する。

遺伝型
栽培条件
生育環境
植物が受けたストレス

科学的レビューでは、種子中の総アルカロイド含有量として、およそ

乾物100 gあたり0.007~4.5 g

という非常に広い範囲が報告されている。

つまり、試料によっては含有量に数百倍もの差が生じることがある。

そのため、「X時間ゆでて、正確に48時間浸水すれば安全」というような一律の方法で、由来不明のすべてのロットの安全性を保証することはできない。

Low-alkaloid tarwi

低アルカロイド系統では、必要な処理は大幅に少なくなる。

ただし、具体的な調理方法は、製造者の表示またはその品種に関する情報に従って決める必要がある。

tarwi という名称だけでは、低アルカロイドであることは保証されない。

実用上のルール

家庭で使用する場合は、次のいずれかを選ぶほうが適している。

専門的な処理によってすでに脱苦された chochos / tarwi
品種名と debittering 方法が明確に表示された乾燥種子

由来や品種が不明な乾燥 tarwi は、通常の浸水と煮沸だけで安全になったと判断すべきではない。

Tarwi は、伝統的な穀粒豆類の中でも特にたんぱく質含有量が高い作物の一つである。

大規模なレビューによると、Lupinus mutabilis の乾燥種子には、おおよそ次の成分が含まれる。

たんぱく質: 乾物100 gあたり32.0~52.6 g
脂質: 乾物100 gあたり13.0~24.6 g

平均的な含有量は、遺伝型や栽培条件によって大きく異なる。

2026年に発表されたエクアドルの遺伝資源を対象とした研究では、平均値としておよそ次の値が報告されている。

たんぱく質: 44.7%
脂質: 19.9%

非常に高いたんぱく質含有量と、豆類としては多い脂質を併せもつことから、tarwi はしばしば大豆と比較される。

脂肪酸

Tarwi の脂質には、不飽和脂肪酸が豊富に含まれる。

レビューでは、脂質中の脂肪酸組成について、おおよそ次の範囲が報告されている。

オメガ3脂肪酸: 1.9~3.0%
オメガ6脂肪酸: 26.5~39.6%
オメガ9脂肪酸: 41.2~56.2%

主要な脂肪酸は、オレイン酸とリノール酸である。

たんぱく質

Tarwi のたんぱく質にはすべての必須アミノ酸が含まれているが、その組成比が完全に均衡しているわけではない。

他のルーピン類と同様に、リシンは比較的豊富に含まれる。

一方、主な制限アミノ酸は含硫アミノ酸である。

メチオニン
システイン

一般的なインゲンマメとの違い

Tarwi は、一般的なインゲンマメ Phaseolus vulgaris とは化学組成が大きく異なる。

主な特徴は次のとおりである。

脂質含有量がはるかに高い
たんぱく質含有率が非常に高い
でんぷん含有量が少ない

そのため、栄養組成の面では、一般的なでんぷん質の乾燥豆よりも、他のルーピン類や大豆に近い特徴をもつ。

キノリチジンアルカロイド

Tarwi に特有の主な安全上の問題は、キノリチジンアルカロイド、QA に関係する。

主要なアルカロイドは通常、

lupanine

である。

そのほか、次のような成分も含まれる。

sparteine
3-hydroxylupanine
13-hydroxylupanine
4-hydroxylupanine
その他の関連化合物

公表されているデータでは、L. mutabilis の総アルカロイド含有量は、およそ

乾物100 gあたり0.007~4.5 g

という非常に広い範囲を示している。

この大きな差は、栽培品種の遺伝的多様性と生育環境の違いを反映している。

作用

高濃度のキノリチジンアルカロイドは神経毒性を示し、抗コリン作用による症候群に似た中毒症状を引き起こす。

主な症状には次のようなものがある。

口の渇き
瞳孔の拡大
かすみ目
頻脈
吐き気
嘔吐
めまい
運動協調障害
意識の混乱

重度の中毒では、次のような症状が起こる場合がある。

筋力低下
麻痺
不整脈
呼吸障害

生の種子や、脱苦処理が不十分な種子は食用にしてはならない。

煮沸だけでは不十分な理由

アルカロイドは、単純に「加熱によって分解される」だけではない。

伝統的な無毒化処理の中心となる仕組みは、アルカロイドを水中へ溶出させ、その水とともに除去することである。

加熱はこの過程を助けるが、繰り返し行う水への溶出処理の代わりにはならない。

そのため、伝統的な debittering に使用した水は飲用してはならない。

苦味

明瞭な強い苦味は、相当量のアルカロイドが残っている可能性を示す重要な警告サインである。

ただし、強い苦味が感じられないことを、安全な濃度であるという分析上の証明として扱うことはできない。

そのため、由来不明のロットについて、1粒だけ試食して安全性を判断する方法は信頼できない。

アレルギー

Tarwi は Lupinus 属に属し、ルーピンアレルギーを引き起こす可能性のあるたんぱく質を含む。

欧州連合では、ルーピンを含む食品にはアレルゲン表示が義務付けられている。

ラッカセイやその他の豆類との間で、IgE による交差感作が起こる可能性もある。

アレルギーとキノリチジンアルカロイド中毒は、まったく異なる二つのリスク機序である。

Tarwi の乾燥種子は、密閉容器に入れ、乾燥した涼しく暗い場所で保存する。

次のような条件は避ける。

高い湿度
直射日光
高温
害虫
急激な温度変化

丸のままの乾燥種子は、次のような加工品よりも長期間保存しやすい。

砕いた種子
粉
粉砕後のたんぱく質製品

Tarwi は比較的脂質含有量が高いため、粉砕後の製品は特に脂質の酸化を受けやすい。

そのため、tarwi 粉は丸のままの乾燥種子よりも低温で保存し、より早く使い切ることが望ましい。

脱苦処理済みで水分の多い chochos は、製造者の表示に従って保存する。

開封後は、通常冷蔵庫で保存する。

Tarwi は、新世界で独立して栽培化されたルーピンの珍しい例である。

地中海地域の食用ルーピンが旧世界で栽培化されたのに対し、Lupinus mutabilis はアンデス地域で独立して農作物へ発展した。

遺伝学的研究によって、その歴史はかなり詳しく復元されている。

最も有力な野生祖先は Lupinus piurensis と考えられ、最初の栽培化の中心地はペルー北部、特にカハマルカ周辺であった可能性が高い。

栽培型 tarwi と野生祖先が分岐した時期は約 2600年前 と推定されている。

一方、現在確認されている最古の明確な栽培型 tarwi の考古学的種子は、それより新しい約 1800年前 のものである。

これは、遺伝学的に推定された栽培化年代と、最古の考古学的発見年代が必ずしも一致しないことを示す好例である。

Tarwi は、乾燥種子におよそ 32~53%のたんぱく質 と 13~25%の脂質 を含むことから、「アンデスの大豆」と呼ばれることがある。

ただし、植物学的にも食品加工上も大豆とはまったく異なる作物である。

Tarwi を直接食用に利用するうえで最大の障害となるのは、キノリチジンアルカロイドである。

エクアドルでは chocho は日常的な食品として広く利用されており、現代の都市部のペルーやボリビアにおける tarwi よりも、食生活への浸透度が高い。

近年のレビューでは、エクアドルにおける年間消費量は 1人あたり約4 kg とされ、ペルーやボリビアではこれよりかなり低い値が報告されている。

数十年にわたる育種にもかかわらず、エクアドルで現在広く栽培されている主要な商業品種の多くは、依然として bitter 型である。

一方で、状況は急速に変化している。

2026年には、アルカロイド含有量が約 0.04% の新しいエクアドル産 L. mutabilis 系統が研究され、より扱いやすい low-alkaloid tarwi を育成できる可能性が示された。

低アルカロイド化には別の課題もある。

アルカロイドは植物にとって自然の化学的防御物質であるため、その含有量を下げると、害虫や病害への感受性が高まる可能性がある。

代表的な low-alkaloid 品種 Inti では、アルカロイド含有量は極めて低かった一方、害虫、病害、不利な気象条件に対して高い感受性を示した。

Tarwi の主要な病害の一つが 炭疽病 であり、その抵抗性は現在でも重要な育種目標となっている。

Tarwi はアンデスの非常に高い標高でも栽培できるが、単純に「非常に耐霜性の高い豆」と考えることはできない。

若い植物は、約−2°C でも低温障害を受ける場合がある。

種小名 mutabilis は「変化しやすい」「変異に富む」という意味であり、この植物に非常によく当てはまる。

Tarwi は、花色と種子色の両方に非常に幅広い変異を示す。

日本では食材としてほとんど知られていないため、百科事典の項目名としては タルウィ が最も分かりやすい。

日本の植物資料では、ほかに アンデス・ルピナス、ルピナス・ムタビリス、まれに ザッショクノボリフジ という名称もみられる。