
🇯🇵 日本語: 落花生(らっかせい)、ピーナッツ
別名: 南京豆(なんきんまめ)
🇬🇧 English: Peanut, Groundnut
その他の名称: goober / goober pea, monkey nut
🔬 学名: Arachis hypogaea L.
🌿 科名: Fabaceae(マメ科)
主に使われる料理・地域: 落花生は、中国、インド、インドネシア、タイ、フィリピン、西アフリカ諸国、アメリカ、メキシコ、ブラジルの料理において特に重要な食材である。
日本では全国的に利用される一方、地域の食文化との結びつきも強く、特に沖縄県、千葉県、神奈川県で重要な位置を占める。
一般に「groundnut(地中になる豆)」や「peanut」と呼ばれるが、落花生は植物学的にはナッツ類ではない。マメ科(Fabaceae)に属する豆類であり、果実は莢果で、その内部に通常複数の種子が形成される。
落花生の大きな特徴の一つが、**地下結実(geocarpy)である。花は地上で開花し、受粉する。受精後、子房の基部から子房柄(gynophore、peg)**と呼ばれる細長い器官が伸び、下方へ向かって成長して子房を土中へ押し込む。果実はその後、地下で形成され成熟する。
そのため、「花が地中にもぐる」という説明は厳密には正確ではない。地中に入るのは花そのものではなく、伸長した子房柄の先端にある子房である。
地下結実は被子植物の中では比較的珍しい性質だが、落花生だけに見られるものではない。例えば、バンバラマメを含む一部のマメ科植物でも地下で果実が形成される。
FAOの分類では、落花生はマメ科作物ではあるものの、統計上の狭義の**pulses(乾燥食用豆類)には含まれない。これは、落花生が食用豆類であると同時に、世界的に重要な油糧作物(oilseed crop)**として栽培されているためである。
この記事は現在、一部未完成のため、内容を随時追加・更新しています。
栽培種の落花生は、南アメリカを起源とする。
近年のゲノム研究によると、Arachis hypogaea は、2種の野生二倍体種の交雑によって生じた**異質四倍体(allotetraploid)**である。
Arachis duranensis はAゲノムの供与種、
Arachis ipaensis はBゲノムの供与種とされる。
栽培落花生の祖先が成立した地域は、現在のボリビアおよびそれに隣接するアルゼンチン北西部周辺であった可能性が高い。Kew Plants of the World Onlineでは、栽培種 A. hypogaea をボリビア起源の栽培植物(cultigen)として扱っている。
ゲノム研究では、数千年前にこの2種の祖先集団が接触し、交雑したことによって現在の栽培落花生につながる系統が成立したと考えられている。遺伝学的データは、その起源がきわめて限定的であり、最初の交雑が一度、またはごく少数回であった可能性を示している。
考古学的資料からは、約8500年前にはすでにペルー北部で Arachis 属植物が人によって利用されていたことが確認されている。サニャ渓谷およびニャンチョク遺跡から発見された植物遺存体は、野生の Arachis 属植物、あるいは栽培化の初期段階にあった植物と考えられている。明確に栽培化された A. hypogaea と同定できる考古学的資料は、それより後の時代のものとなる。
ヨーロッパ人がアメリカ大陸に到達した時点で、落花生はすでにアメリカ大陸の広い地域で栽培されていた。コロンブス交換以降、ポルトガルおよびスペインの交易網を通じてアフリカ、ヨーロッパ、南アジア、東南アジアへと広まり、その後、多くの地域で現地の食文化に深く定着した。
落花生は、熱帯、亜熱帯、および温暖な温帯地域を中心に、100か国以上で栽培されている。
FAOSTATによると、2024年の世界生産量は約5,750万トンであった。
主要生産国は以下の通りである。
中国:約1,960万トン、世界生産量の約34%
インド:約1,195万トン、約21%
これにナイジェリア、アメリカ、ミャンマーなどが続く。
そのため、以前に見られた「中国が世界の落花生生産量の約38%を占める」という数値は、現在の統計ではやや高すぎる。
日本における落花生
日本最大の落花生産地は千葉県である。
2024年には、日本全国で約1万4,800トンの乾燥落花生が収穫され、そのうち約86%を千葉県が占めた。
千葉県では、ゆで落花生や落花生味噌などが地域の伝統的な食文化として知られている。
植物学的には、栽培落花生には主に A. hypogaea subsp. hypogaea と A. hypogaea subsp. fastigiata の2亜種があり、その中に複数の植物学的変種が含まれる。栽培落花生は起源となった遺伝的基盤が非常に狭いにもかかわらず、現在ではきわめて多様な品種が存在する。
国際取引や食品産業では、これとは別に実用的な分類が用いられることが多い。特に一般的なのが、以下の4つの商品タイプである。
Runner
中程度の大きさの種子をもつ。アメリカでは、工業的なピーナッツバター製造に最も広く利用されるタイプである。
Virginia
種子が特に大きく、莢も大型で外観がよい。殻付きのまま販売されることが多く、スナック用落花生としてよく利用される。
Spanish
比較的小粒で、赤褐色の種皮をもつものが多い。菓子、スナック、一部のピーナッツバターなどに利用される。
Valencia
比較的小粒で、1つの莢に3〜4粒の種子が入ることが多い。ゆで落花生や一部のピーナッツバターなどに利用される。
これらの名称は流通・商品上の分類であり、植物学的な変種と直接対応するものではない。
生の成熟した落花生の種子は、ほのかな甘味に加え、植物的でやや土を思わせる風味をもつ。
加熱して焙煎すると香りは大きく強まり、濃厚なナッツ香、香ばしさ、甘味、カラメルを思わせる風味が現れる。焙煎落花生特有の香りの形成には、メイラード反応と、加熱によって生成される各種の揮発性香気成分が重要な役割を果たす。
薄い赤褐色の種皮にはタンニン類が比較的多く含まれるため、わずかな苦味や渋味を感じることがある。
落花生の種子は、丸ごとまたは砕いて、さまざまな料理に利用される。
• 焙煎またはゆでたスナックとして
• ソースや濃い煮込み用のたれに
• カレーや煮込み料理に
• スープに
• 野菜料理やサラダに
• 米料理や麺料理に
• チャツネや調味料に
• 詰め物に
• 菓子類に
• キャンディーやキャラメルに
• クッキーや焼き菓子に
• 食感を加えるトッピングとして
• すりつぶしてソースや煮汁のとろみ付けに
また、落花生は工業的にピーナッツバターや落花生油の原料としても広く利用される。
落花生が主材料、または特徴的な材料として使われる代表的な料理
🇮🇩 Gado-gado — インドネシア
野菜に、焙煎した落花生をすりつぶして作る濃厚な bumbu kacang を合わせる料理である。落花生ソースは、gado-gado を特徴づける重要な要素の一つである。インドネシアでは、bumbu kacang は特にジャワ料理を代表する調味ソースの一つとして広く用いられる。
🇮🇩 Sate Madura — インドネシア
マドゥラ地方の代表的なサテで、濃厚な落花生ソースを添えて食べるのが伝統的である。
ただし、「サテには必ず落花生ソースを使う」という説明は正確ではない。インドネシアには多数のサテがあり、Sate Padang をはじめ、まったく異なるソースを使う種類も多い。落花生ソースが特に特徴的なのは、Sate Madura などの一部のサテである。
🇵🇭 Kare-kare — フィリピン
肉や野菜を、すりつぶした落花生を基調とする濃厚なソースで煮込むフィリピン料理である。伝統的には炒った米を加えてとろみをつけることもある。落花生は、kare-kare 特有の風味と食感を形成する重要な材料である。
🌍 Groundnut stew / Peanut stew — 西アフリカ
西アフリカでは、落花生を使った濃厚なスープ、ソース、煮込み料理が広く見られる。落花生はすりつぶしたりペースト状にしたりして用い、料理のベースととろみを作る。
ガンビアでは、代表的な料理の一つに Domoda がある。落花生を使った濃厚な煮込み料理で、一般に米とともに食べられる。
mafé / maafe、domoda、tigadèguèna などは、いずれも西アフリカの落花生を使った煮込み料理やソースの伝統に属するが、地域ごとに材料や調理法が異なり、完全に同一の料理ではない。
🇯🇵 ジーマーミ豆腐 — 日本・沖縄県
生の落花生とでんぷんを使って作る、沖縄の伝統料理である。
落花生を水とともにすりつぶして搾り、その液体にでんぷんを加え、加熱しながら練り上げることで、なめらかで弾力のある食感に仕上げる。
名称に「豆腐」とあるものの、大豆から作る一般的な豆腐とは異なる。
「ジーマーミ」は沖縄の言葉で落花生を指し、「地豆」に由来する名称とされる。
🇯🇵 落花生味噌 — 日本・千葉県
落花生と味噌を組み合わせた千葉県の郷土料理である。落花生の産地では、見た目や大きさなどの理由で商品規格から外れた豆を有効利用する料理としても発達した。
🇯🇵 ゆで落花生 — 日本・千葉県、神奈川県
収穫したばかりの落花生を殻付きのまま塩水でゆでる料理である。
新鮮な落花生は収穫後に品質が変化しやすいため、落花生の産地を中心に、生の状態で味わう代表的な食べ方として定着している。
🇨🇳 宫保鸡丁 / Kung Pao Chicken — 中国・四川
鶏肉、乾燥唐辛子、落花生などを炒め合わせる四川料理の代表的な一品である。焙煎した落花生が、やわらかな鶏肉に対して香ばしさとカリッとした食感の対比を加える。
🇹🇭 Pad Thai — タイ
砕いた焙煎落花生は、伝統的なパッタイの代表的な仕上げ材料である。麺と混ぜて提供する場合もあれば、皿の脇に添えて好みで加える場合もある。
そのため、落花生はパッタイに非常に特徴的な材料ではあるが、すべての提供形態において絶対に欠かせない材料とは言い切れない。
🇮🇳 Palli chutney / Peanut chutney — 南インド
落花生のチャツネは、特にアーンドラ・プラデーシュ州とその周辺地域で広く食べられる。
焙煎した落花生を唐辛子や香辛料とともにすりつぶし、dosa、idli、pesarattu などの料理に添える。
🇺🇸 Peanut Butter & Jelly Sandwich — アメリカ
ピーナッツバターとフルーツゼリーまたはジャムをパンにはさんだサンドイッチで、アメリカの日常食を代表する食品の一つである。
ピーナッツペーストとゼリーを組み合わせた初期の印刷レシピの一つは、1901年に確認されている。
🇺🇸 Boiled Peanuts — アメリカ南部
生または収穫直後の落花生を殻付きのまま塩水で長時間ゆでる料理である。特にアメリカ南東部で強い食文化として定着している。
🇲🇽 Mole de cacahuate — メキシコ
焙煎した落花生、唐辛子、ゴマ、香辛料などを使って作るソースである。
落花生は一部の pipián やその他の mole にも使われるが、mole の材料構成は地域や種類によって大きく異なる。そのため、落花生をすべての mole に共通する必須材料とするのは正確ではない。
🇧🇷 Paçoca de amendoim — ブラジル
焙煎して細かくした落花生と砂糖を主材料とする伝統菓子である。地域や製法によっては粉類を加える場合もある。
特に Festas Juninas と強く結びついた菓子として知られる。
落花生は、以下の食材や調味料と特に相性がよい。
唐辛子、にんにく、しょうが、玉ねぎ、タマリンド、ライム、ココナッツ、パクチー、青ねぎ、ゴマ、味噌、醤油、パームシュガー、トマト、サツマイモ、ナス、青菜類、鶏肉、豚肉、牛肉、エビ、米、米麺。
甘い料理や菓子では、以下の食材とよく組み合わせられる。
チョコレート、キャラメル、はちみつ、バナナ、ココナッツ、粗糖、ジャム類。
焙煎
成熟した落花生の最も一般的な調理・加工方法の一つである。
以下の方法で焙煎できる。
• 殻付きのまま焙煎する
• 殻をむいて焙煎する
• 油を使わず乾煎りする
• 油を加えて焙煎する
焙煎によって、落花生特有の香ばしい風味と香りの大部分が形成される。
ゆでる
ゆで落花生には、特に収穫したばかりの新鮮な殻付き落花生が適している。塩を加えた湯で、やわらかくなるまでゆでる。
日本では、この食べ方はゆで落花生として知られている。
砕く・すりつぶす
焙煎した落花生は、用途に応じてさまざまな状態に加工できる。
• 粗く刻んでトッピングにする
• すり鉢などですりつぶす
• ペースト状にしてソースに使う
• 細かく砕き、スープや煮込み料理のとろみ付けに使う
生の落花生100gあたり、おおよそ以下の栄養成分を含む。
567 kcal
たんぱく質 25.8g
脂質 49.2g
炭水化物 16.1g
食物繊維 8.5g
脂質の多くは不飽和脂肪酸で占められている。
また、落花生には以下の栄養素も比較的多く含まれる。
• ナイアシン(ビタミンB3)
• 葉酸(ビタミンB9)
• ビタミンE
• チアミン(ビタミンB1)
• マグネシウム
• リン
• 銅
• マンガン
• カリウム
生の落花生100gには、約3.1gのアルギニンが含まれる。
栄養成分の数値は、品種や栽培条件、加工・調理方法によって変化する。
⚠️ アレルギー
落花生は、特に注意が必要な主要食物アレルゲンの一つであり、アナフィラキシーを含む重篤な全身反応を引き起こすことがある。
落花生アレルギーは、食品の品質低下や腐敗によって起こるものではない。落花生に含まれる特定のたんぱく質に対して免疫系が反応することで生じる。
日本では、落花生(ピーナッツ)は食品表示法上の特定原材料に指定されており、容器包装された加工食品では表示が義務付けられている。現在、表示義務の対象となる特定原材料は8品目である。
⚠️ アフラトキシン
落花生は、Aspergillus flavus や Aspergillus parasiticus など、アフラトキシンを産生する一部の Aspergillus 属菌による汚染を受けやすい作物である。
汚染は不適切な保存時だけに起こるわけではない。栽培中にも、高温、干ばつ、莢や種子の損傷などの条件によって発生する可能性がある。また収穫後も、乾燥不足、高湿度、不適切な保管によってリスクが高まる。
アフラトキシンB1 は遺伝毒性をもつ発がん物質であり、特に肝細胞がんとの関連が強く知られている。WHO/JECFAでは、アフラトキシン類を食品中に存在し得る非常に強力な天然由来の変異原性・発がん性汚染物質として評価している。
カビの有無や異臭だけでアフラトキシン汚染を確実に判断することはできない。流通・販売用のロットでは、適切な検査による確認が必要となる。
落花生は不飽和脂肪酸を多く含むため、保存中に徐々に酸化による油脂の劣化が進み、風味が落ちることがある。
品質を保つため、乾燥した落花生は以下の条件で保存する。
• 乾燥した場所に置く
• 高温や直射日光を避ける
• 密閉性の高い容器や包装で保存する
• 湿気をできるだけ避ける
殻をむいた落花生を家庭で長期間保存する場合は、冷蔵または冷凍保存が適している。
焙煎後も脂質の酸化は進行するため、時間の経過とともに香ばしい風味が弱まり、紙や段ボールを思わせる風味、酸化臭、油の劣化による不快な風味が生じることがある。
落花生は、マメ科作物であると同時に油糧作物でもある。そのため植物学的にはインゲンマメやエンドウなどと同じマメ科に属するが、農業統計では油糧作物として扱われることが多い。
現代の栽培落花生は、非常に狭い遺伝的基盤をもつ。起源は2種の野生種の交雑に由来すると考えられているが、その後、人為選抜によって種子の大きさや色、莢の形、草姿などが異なる多数の在来系統や品種が生み出された。
アメリカ南部で使われる goober という呼称は、アフリカに由来する。コンゴ地域の諸言語で落花生を意味する nguba に由来するとされ、アメリカ英語への定着は、アフリカ系住民と南部における落花生文化の歴史と深く関係している。
落花生は、コロンブス交換以前には存在しなかった地域の食文化にも完全に定着した。西アフリカの落花生煮込み、インドネシアの bumbu kacang、さらに多くのアジア料理は、南アメリカ原産の落花生が海を越えて広がった後に成立した食文化の代表例である。
日本にも独自の地域的な落花生文化がある。千葉県は国内生産の大部分を占める主要産地であり、沖縄では落花生が ジーマーミ豆腐 の主原料として独自の料理文化に定着している。
Kew Science — Plants of the World Online: Arachis hypogaea
Kew POWO: Arachis hypogaea
Nature Genetics — The genome sequences of Arachis duranensis and Arachis ipaensis
Nature Genetics
Nature Genetics — The genome sequence of allotetraploid peanut Arachis hypogaea
Nature Genetics
Plant Biology — A single hybrid origin of cultivated peanut
PubMed Central
Science / PubMed — Preceramic adoption of peanut, squash and cotton in northern Peru
PubMed
FAO — What is the difference between legumes and pulses?
FAO
FAOSTAT — Crop production, yield and harvested area
FAOSTAT dataset
USDA ARS — Peanut breeding and commercial peanut types
USDA Agricultural Research Service
USDA FoodData Central — Peanuts, all types, raw, FDC 172430
USDA FoodData Central
WHO/JECFA — Aflatoxins
WHO JECFA
FDA — Major Food Allergens
U.S. FDA
消費者庁 — 食物アレルギー表示ハンドブック
Consumer Affairs Agency, Japan
農林水産省 — ジーマーミ豆腐(沖縄県)
MAFF: ジーマーミ豆腐
農林水産省 — 落花生味噌(千葉県)
MAFF: 落花生味噌
農林水産省 — ゆで落花生(千葉県)
MAFF: ゆで落花生
