
🇯🇵 日本語: アフリカンローカストビーン
日本での別表記: パルキア・ビグロボサ
🇬🇧 English: African locust bean, West African locust bean
🔬 学名: Parkia biglobosa (Jacq.) R.Br. ex G.Don
🌿 科名: Fabaceae
African locust bean は、西アフリカで重要な伝統的食用樹木およびアグロフォレストリー樹種の一つである Parkia biglobosa の成熟した乾燥種子である。
この百科事典で扱う多くの乾燥豆類とは異なり、一年生の畑作物ではなく、大型の多年生樹木から採れる種子である。
成熟した果実には、二つの異なる食用部分がある。
- 種子を包む黄色い粉質の果肉
- 硬い成熟種子
果肉は甘味があり、そのまま食べたり、飲料の原料として利用されたりする。
種子は非常に硬い種皮をもち、食用にするには長時間の加工が必要である。
成熟種子の最もよく知られた利用法は、伝統的な発酵調味料の製造である。
地域によって、こうした発酵製品は次のように呼ばれる。
- iru
- dawadawa
- soumbala
- nététou
- afitin
- sonru
これらは加工後の発酵製品の名称であり、乾燥種子そのものの厳密な同義語ではない。
発酵製品については別項目で扱うのが適切である。本項では、原料としての Parkia biglobosa の成熟乾燥種子を中心に扱う。
この記事は現在、一部未完成のため、内容を随時追加・更新しています。
主な英語名:
- African locust bean
その他の名称:
- West African locust bean
フランス語圏の西アフリカでは、この樹木は広く次の名称で知られている。
- néré
発酵製品の名称
地域名は、言語や製造方法によって大きく異なる。
特によく記録されている名称:
- iru: ナイジェリア、ベナン
- dawadawa / dawadawa: ナイジェリア、ガーナおよび周辺地域
- soumbala / soumbara: ブルキナファソ、マリおよび西アフリカのその他の地域
- nététou: セネガル
- afitin: ベナン
- sonru: ベナン
一部の地域名は、樹木そのもの、果実、または特定の発酵調味料を指す場合がある。
そのため、これらを乾燥種子そのものの互換的な名称として扱うことはできない。
日本語名
この食材には、日本で広く定着した料理用の名称はない。
百科事典の項目名としては、次の音写が最も分かりやすい。
- アフリカンローカストビーン
植物そのものについては、学名の音写も使用される。
- パルキア・ビグロボサ
パルキア属 は Parkia 属全体を指す名称であり、特定の食材名としては範囲が広すぎる。
Locust bean gum との混同に注意
African locust bean と locust bean gum / carob bean gum は、まったく異なる食品である。
African locust bean:
- Parkia biglobosa
- 熱帯アフリカ原産
- 種子と果肉が食用に利用される
Locust bean gum:
- Ceratonia siliqua
- イナゴマメ
- 地中海地域原産
- 種子の胚乳から製造される
- 食品添加物 E410
両者はどちらもマメ科 Fabaceae に属するが、異なる属の植物であり、得られる食品も用途もまったく異なる。
Parkia biglobosa はアフリカ原産の種である。
現在の自然分布域は、西部熱帯アフリカから南スーダンまで広がっている。
自然分布域には、次の国々が含まれる。
- セネガル
- ガンビア
- ギニア
- ギニアビサウ
- シエラレオネ
- コートジボワール
- ガーナ
- トーゴ
- ベナン
- ブルキナファソ
- マリ
- ニジェール
- ナイジェリア
- カメルーン
- 中央アフリカ共和国
- チャド
- 南スーダン
本種は、主に季節的に乾燥する熱帯地域に分布し、特にサバンナやスーダン帯、スーダン・ギニア帯の景観に特徴的である。
とりわけ西アフリカでは、重要な食用樹木であると同時に、地域経済を支える樹種として大きな役割を果たしている。
Parkia biglobosa は多年生の落葉高木である。
樹高:
- 通常は 20 m以下
- 個体によっては約 30 m に達する
樹冠:
- 広い
- 横に大きく広がる
- 密生する
葉:
- 二回羽状複葉
- 大型
- 多数の小葉からなる
花序:
- 大型
- 球形または棍棒状
- 長い花柄の先に垂れ下がる
サヘル地域では、開花期は主として乾季にあたり、およそ 12月~4月 である。
主要な有効送粉者:
- コウモリ
- ミツバチ
- ハリナシバチ
そのほかの昆虫も花を訪れる。
果実は、細長く厚みのある豆果である。
果実の大きさ:
- 長さ約 12~35 cm
- 幅約 1.5~2.5 cm
1つの果実に含まれる種子数:
- 通常 5~23粒
成熟種子は、黄色い粉質の果肉に包まれている。
種子の外観
成熟種子は比較的大きく、非常に硬い。
典型的な形:
- 丸みを帯びた卵形
- 楕円形
- やや扁平
大きさ:
- 約 5~15 mm
成熟した種皮の色:
- 濃褐色
- 黒褐色
種皮:
- なめらか
- 光沢がある
- 非常に硬い
種子には、ミモザ亜科系統の一部のマメ科植物に特徴的な、側面の明瞭なプレウログラムが見られる。
おおよその粒数:
- 1 kgあたり 4500~5000粒
これは100粒重で約 20~22 g に相当するが、種子の大きさは集団によって異なる。
アグロフォレストリーと収穫
Parkia biglobosa は、西アフリカの伝統的な parkland 型アグロフォレストリーを特徴づける樹木の一つである。
農地を開墾する際には、有用な成木を残すことが多く、地域によっては意図的に植栽されることもある。
樹冠の下では、次のような環境条件が変化することがある。
- 気温
- 風速
- 水分蒸発量
- 土壌中の有機炭素量
- 一部の無機養分含量
ただし、この樹木が周辺作物の収量に与える影響は、常に有利とは限らない。
影響は次の条件によって異なる。
- 栽培する作物の種類
- 樹木の大きさ
- 樹冠の密度
- 降水量
- 樹木に対する作物の位置
研究では、樹冠下で有利な微気候が形成されることが示される一方、条件によっては強い遮光により、トウジンビエなど一部の作物の収量が低下する例も報告されている。
そのため、Parkia biglobosa は、周辺作物の収量を自動的に高める樹木ではなく、多機能なアグロフォレストリー構成種として捉える方が正確である。
果実の収穫と加工は、女性の経済活動と密接に結び付いている。
西アフリカの多くの地域では、女性が特に次の作業に深く関わっている。
- 果実の収集または入手
- 種子の分離
- 加工
- 発酵
- 完成した調味料の販売
ただし、収穫権や製品の分配方法は、地域、土地所有制度、家族関係、民族集団によって異なる。
そのため、分布域全体で収穫を女性だけの仕事とみなすのは正確ではない。
Parkia biglobosa については、インゲンマメ、ヒヨコマメ、レンズマメのような主要畑作物と比較できる、現代的で標準化された世界生産統計は整備されていない。
原料の多くは、大規模な単一栽培農園ではなく、次のような環境から得られる。
- 伝統的なアグロフォレストリー・パークランド
- 有用樹木を残した農地
- 半野生状態の樹林
- 自然集団
乾燥種子および加工種子の地域内取引は、西アフリカで重要な経済的役割をもつ。
一方、国際貿易は地域内取引に比べて大幅に小さい。
古い産業資料では、ナイジェリア北部で非常に大規模な種子生産が行われていたとする推計も存在する。
ただし、これらの数値を現在の世界生産量を示す統計として使用するのは適切ではない。
未加工の成熟種子は、一般的な乾燥豆のようにそのまま調理して食べるものではない。
主な理由:
- 種皮が非常に硬い
- やわらかくなるまで長時間を要する
- 抗栄養因子を含む
- さらに伝統的な加工を必要とする
長時間煮た後に種皮を取り除くと、子葉はかなりやわらかくなる。
伝統的な料理では、その後さらに発酵させて利用することが多い。
完成した発酵製品は、乾燥種子とはまったく異なる風味をもつ。
- 非常に強い香り
- はっきりした濃厚な風味
- 強いうま味
これらの風味は、原料となる乾燥種子そのものではなく、dawadawa、iru、soumbala などの発酵製品に由来する。
成熟した乾燥種子の最も重要な食用用途は、西アフリカの伝統的な発酵調味料の原料として利用されることである。
種子を長時間煮た後、硬い種皮を除去し、さらに発酵させることで、次のような製品が作られる。
- dawadawa
- iru
- soumbala
- nététou
- afitin
- sonru
これらの発酵製品は、少量を加えて次のような料理の風味付けに使われる。
- スープ
- ソース
- 野菜料理
- オクラ料理
- 肉の煮込み料理
- 穀類や米を使った料理
地域の食文化では、濃縮された調味料および風味増強素材として機能する。
発酵製品の製造技術、種類、風味、具体的な料理については、別項目で扱う。
種子には、焙煎や粉砕など、より限定的な利用法もある。
ただし、最も特徴的で伝統的な食用用途は、発酵調味料の製造である。
果実の黄色い果肉も食用になるが、これは植物の別の食用部位であり、乾燥種子とは区別して扱う。
成熟した乾燥種子は種皮が非常に硬く、一般的な乾燥豆よりはるかに長い加工時間を必要とする。
伝統的な下ごしらえは、次の工程から始まる。
- 果肉の残りを取り除く
- 洗う
- 乾燥させる
- その後、長時間煮る
伝統的な発酵製品を作る場合、種子を次の時間煮ることがある。
- 約 12~24時間
十分にやわらかくなった後:
- 種皮を取り除く
- 子葉を洗う
- 多くの場合、再び煮る
伝統的な製法では、二回目の加熱時間はおよそ次の範囲になることがある。
- 30分~2時間
その後、通常は発酵工程に入る。
具体的な加工方法は地域によって大きく異なる。
発酵
このカードでは、発酵の基本原理のみを扱う。
発酵の特徴:
- 自然発酵
- 主として細菌による
- アルカリ発酵
主要な役割を果たすのは、Bacillus 属の細菌である。
よく検出される菌:
- Bacillus subtilis
- Bacillus licheniformis
- Bacillus pumilus
- その他の Bacillus spp.
そのため、dawadawa が Bacillus subtilis だけによって作られるとする説明は、単純化しすぎている。
Parkia biglobosa の種子成分は、主要な穀粒豆類と比べると研究例が少ない。
2022年の系統的レビューでは、既報データのばらつきが非常に大きく、多くの研究で分析方法やデータ品質、相互比較性に課題があることが指摘されている。
そのため、一つの数値をすべての Parkia biglobosa 種子に共通する標準値として扱うことはできない。
成熟した乾燥種子100 gあたりの参考値として、系統的レビューでは次の値が示されている。
- エネルギー: 約 445 kcal
- たんぱく質: 約 32.3 g
- 脂質: 約 19.5 g
- 炭水化物: 約 33.0 g
- 食物繊維: 約 4.1 g
- 灰分: 約 4.1 g
- 水分: 約 7.0 g
これらは乾燥種子について報告された一つの参考データセットに基づく値であり、あらゆる市販品に共通する正確な成分値とみなすべきではない。
全体として、種子は豆類としては比較的高い次の成分を併せ持つ。
- たんぱく質
- 脂質
- エネルギー
そのため、成分構成は、でんぷんを主成分とする多くの乾燥インゲンマメとはかなり異なる。
Parkia biglobosa の成熟した生種子は、そのまま食べるべきではない。
種子には、次のようなさまざまな抗栄養成分が報告されている。
- フィチン酸
- シュウ酸塩
- タンニン
- プロテアーゼ阻害因子
- サポニン
そのほかの成分についても個別研究で報告されているが、定量値は分析方法によって大きく異なる。
系統的レビューでも、抗栄養成分の分析方法にはかなりのばらつきがあることが指摘されている。
Parkia biglobosa には、次のような毒性因子に匹敵するほど、単一で特に有名な食用上の特異的毒素は知られていない。
- 赤インゲンマメのフィトヘマグルチニン
- チナマメの β-ODAP
ただし、これは生の種子をそのまま食べてよいことを意味しない。
伝統的な食用加工には、次の工程が含まれる。
- 長時間の煮沸
- 種皮の除去
- 再加熱
- 通常はその後の発酵
伝統的に食用とされるのは、こうした加工を経た種子である。
果実から取り出した種子は、果肉を除去し、洗浄した後、十分に乾燥させる。
乾燥種子は、次の条件で保存する。
- 密閉容器に入れる
- 乾燥した場所に置く
- 涼しい場所で保存する
- 直射光を避ける
- 昆虫やげっ歯類の被害を防ぐ
非常に硬い種皮は、内部の種子をよく保護する。
播種用種子としてはオーソドックス種子に分類され、低温かつ低湿度の管理条件下では、長期間にわたって発芽能力を維持できる。
これは、十分に乾燥した種子が保存に対して高い耐久性をもつことを間接的に示している。
ただし、食用原料としての実際の保存期間は、含水率、衛生状態、害虫防除などの条件によって左右される。
Parkia biglobosa は単なる食用植物ではなく、西アフリカの伝統的な parkland 型アグロフォレストリーを特徴づける重要な樹木の一つである。
樹木は約 100年 生きることがあり、結実が始まるまでには植栽後数年を要する。
果実からは、性質の大きく異なる二つの食品が得られる。
- 甘味のある黄色い果肉
- たんぱく質と脂質を多く含む種子
種子は非常に硬く、伝統的な加工では数時間から十数時間以上の煮沸を必要とする。
この性質は、African locust bean を一般的な乾燥豆類から大きく区別する特徴の一つである。
Dawadawa、iru、soumbala は、Bacillus 属細菌が重要な役割を果たす アルカリ発酵型の高たんぱく食品 に属する。
日本の納豆も、広い意味では同じタイプの発酵技術に含まれる。
これは食文化における収斂的発達の好例であり、アフリカと東アジアでは、それぞれ独立して Bacillus 発酵を利用し、たんぱく質に富む種子を加工する技術が発達した。
ただし、使用する原料、微生物群、製造方法、最終的な風味はそれぞれ異なる。
African locust bean という名称は、locust bean gum としばしば混同される。
実際には次のように異なる。
- African locust bean は Parkia biglobosa から得られる
- locust bean gum は Ceratonia siliqua から得られる
- 両植物ともマメ科 Fabaceae に属する
- 得られる食品は、製造方法も料理用途もまったく異なる
西アフリカの伝統経済では、Parkia biglobosa の加工は女性の労働や収入と特に深く結び付いている。
多くの地域社会では、女性が種子の収集、加工、発酵、販売に関する専門的な知識を担っている。
Royal Botanic Gardens, Kew, Plants of the World Online. Parkia biglobosa
FAO. Agroforestry parklands in sub-Saharan Africa
Odunfa S.A. Fermentation of African locust bean seeds: involvement of different species of Bacillus
EFSA. Re-evaluation of locust bean gum E410 as a food additive
Pollination ecology of Parkia biglobosa in West African agroforestry systems
FAO AGRIS. Effects of Parkia biglobosa on microclimate, soil properties and associated crops
Feedipedia. African locust bean, Parkia biglobosa
Gender and socioeconomic roles in Parkia biglobosa value chains
Parkia biglobosa Leguminosae en Afrique de l’Ouest: biosystématique et amélioration
