ボルロッティ豆 / Borlotti Bean

🇯🇵 日本語: ボルロッティ豆、クランベリービーン
日本の流通では うずら豆(ボルロッティ) と表記されることもある。ただし、うずら豆 は borlotti の厳密な植物学的同義語ではない。
🇬🇧 English: Borlotti Bean, Cranberry Bean
その他の英語名: Roman Bean, Romano Bean, Rosecoco Bean. ※ Romano Bean は名称が紛らわしく、romano bean / Italian flat bean と呼ばれる平たい莢を食用とするインゲンを指す場合もある。
🔬 学名: Phaseolus vulgaris L.
🌿 科名: Fabaceae(マメ科)

名称に関する重要な区別

Borlotti と cranberry bean は、現代の流通では特にイタリア国外でほぼ同義語のように使われることが多い。ただし、より正確には、borlotti は cranberry-type bean のイタリア系統と考えるのが適切である。
Phaseolus vulgaris (Cranberry Group) という表記は、正式な学名としては使用しない方がよい。Cranberry は主に商業上の market class を示す名称であり、正式な植物分類上のタクソンではない。
また、pinto bean と borlotti は同じものではない。Pinto bean は主に中米系の遺伝的背景をもつ pinto market class に属する一方、cranberry beans は主にアンデス系遺伝子プールに属する。
両者は斑点模様のため外見が似ることがあるが、起源、粒の大きさ、形状、料理文化上の位置づけが異なる。

日本における名称

日本には、斑点模様をもつ Phaseolus vulgaris をまとめて指す伝統的な名称として うずら豆 がある。これは、種皮の模様がウズラの卵に似ていることに由来する。
日本の公的な分類には、中長うずら、福うずら など、日本独自のうずら豆系統・品種も含まれる。そのため、うずら豆はイタリアの borlotti だけを指す厳密な日本語名ではない。
一方、輸入されたイタリア産 borlotti が日本で うずら豆(ボルロッティ) として販売される例もある。イタリア産の borlotti 缶詰などで、このような表記が実際に使われている。
そのため、百科事典や商品名では、ボルロッティ豆(Borlotti Bean / Cranberry Bean)を基本表記とし、うずら豆 は日本での商業上・説明上の補助名称として扱うのが適切である。

基本情報

Borlotti は、Phaseolus vulgaris に属する中〜大粒のインゲンマメである。乾燥種子は通常、楕円形またはやや腎臓形で、クリーム色、ベージュ色、淡褐色の地に、赤紫色、ワイン色、濃い赤色の斑点や縞模様が入る。
加熱すると鮮やかな大理石模様の多くは消え、全体が褐色から淡い赤褐色へ変化する。
適切に調理すると内部はやわらかくクリーミーになる一方、粒そのものは比較的よく形を保つ。

この記事は現在、一部未完成のため、内容を随時追加・更新しています。

Phaseolus vulgaris そのものはアメリカ大陸原産である。栽培インゲンマメには大きく Mesoamerican gene pool と Andean gene pool の2つの遺伝的グループがあり、それぞれ別個の栽培化過程を経て成立した。

Cranberry beans は主に Andean gene pool に属し、特に race Nueva Granada と関連づけられる。ヨーロッパでは、イタリア、イベリア半島、中央ヨーロッパの伝統的なインゲンマメに、アンデス系の遺伝的背景が広く見られる。

そのため、現代のイタリア産 borlotti が、特定のコロンビア産品種 cargamanto から直接作出されたと断定するのは適切ではない。Cargamanto は近縁のアンデス系斑紋豆ではあるが、**「cargamanto → borlotti」**という単純な直接系譜は十分に実証されていない。

イタリアの borlotti は、アメリカ大陸由来のインゲンマメがヨーロッパへ導入された後、各地で長期間にわたって選抜された地域系統の中から形成されたと考えるのが適切である。

北イタリアには、borlotto-type bean を栽培・利用してきた強い伝統がある。

代表的な例の一つが、ヴェネト州の Fagiolo di Lamon della Vallata Bellunese IGP である。公式説明では varietà Borlotto に分類され、Spagnolit、Spagnolo / Ballotton、Calonega、Canalino などの地域エコタイプが挙げられている。いずれもクリーム色の地に、赤色からワイン色の縞や斑紋をもつのが特徴である。

もう一つの重要な地域系統が、ピエモンテ州の Fagiolo di Saluggia である。Piemonte Agri の公式資料では、Saluggia の伝統的な地域産品として記録され、少なくとも20世紀初頭には同地で栽培されていたことが確認されている。地域史料では、それ以前からこの地域にインゲンマメが存在していた可能性も示されている。

したがって Saluggia は、borlotti 全体の発祥地というより、ピエモンテにおける代表的な borlotto-type bean の地域伝統として位置づけるのが適切である。

加熱した borlotti は、濃厚でありながら穏やかな豆の風味をもち、ナッツのような香り、ほのかな甘み、場合によっては栗を思わせる風味をもつと表現される。

適切に加熱すると内部はなめらかでクリーミーになる一方、種皮が粒の形を保つため、完全に煮崩す用途の豆よりも形が残りやすい。

このため、一部を丸ごと残し、一部をつぶしたり裏ごししたりして料理にとろみをつける使い方に特に適している。

Borlotti は、スープ、濃厚な煮込みスープ、pasta e fagioli、risotto などの米料理、野菜の煮込み、サラダ、トマト・豚肉・ソーセージを使った煮込み料理に利用される。また、単独の付け合わせとしても使われる。

相性のよい食材は、玉ねぎ、ニンジン、セロリ、にんにく、トマト、ジャガイモ、キャベツやその他の葉物野菜、セージ、ローズマリー、パセリ、ローリエ、オリーブオイル、pancetta、lardo、豚肉のソーセージ、豚皮、パスタ、米などである。

🇮🇹 Pasta e fagioli / Pasta e fasioi — ヴェネト

Borlotti の代表的な利用法の一つである。ヴェネト州の公式観光資料では、Borlotti 系の Fagioli di Lamon IGP を使った Pasta e fagioli alla veneta が紹介されている。乾燥豆を一晩浸水し、香味野菜や豚肉とともに長時間煮込み、最後にパスタを加える。

La Cucina Italiana の伝統的なレシピでも乾燥 borlotti が使われ、煮た豆の一部をつぶして鍋に戻し、スープに濃度をつける方法が用いられる。

ただし、pasta e fagioli がイタリア全土で必ず borlotti を使うわけではない。地域によっては cannellini、各地の IGP 豆、その他の Phaseolus vulgaris が使われる。

🇮🇹 Panissa — ピエモンテ

伝統的な Panissa Vercellese では、Saluggia 周辺の地域産豆が重要である。豆を煮た後、豆とその煮汁を米、玉ねぎ、豚脂または lardo、伝統的なソーセージ salam d’la doja とともに調理する。

🇮🇹 Minestrone

Borlotti はイタリア各地の minestrone に広く使われ、特にクリーミーでありながら粒の形もある程度残る豆が求められる料理に適している。

ただし、minestrone は borlotti が必須の料理ではない。使用する豆は地域やレシピによって大きく異なり、現代のレシピでは borlotti、cannellini、赤いんげん豆などを組み合わせる場合もある。

乾燥 borlotti は調理前に選別し、小石、植物片、傷んだ種子を取り除いてから水で洗う。

乾燥豆は、8〜12時間または一晩の浸水が適している。浸水後は水を捨て、豆を洗ってから新しい水で加熱する。

浸水後の一般的な加熱時間は約60〜90分である。ただし、豆の古さ、品種、水の硬度、求める食感によって変わり、イタリアの一部の地域系 borlotti では1.5〜2時間程度かかる場合もある。

塩は調理中に加えてもよい。塩を加えると必ず豆が硬くなるという説は支持されておらず、適度な塩分はむしろ食感を整える場合がある。

一方、トマトや酢など酸味の強い材料を大量に加える場合は、豆がある程度やわらかくなってから加える方がよい。

Borlotti の栄養価は、他の成熟した Phaseolus vulgaris の乾燥豆とおおむね同様である。

乾燥 cranberry beans 100gあたりの一例として、USDA 系データではおおよそ 335kcal、たんぱく質23.0g、炭水化物60.1g、脂質1.2g、食物繊維24.7g が示されている。

加熱後は吸水によって重量が増えるため、100gあたりの数値は低くなり、ゆでた cranberry beans ではおおよそ 136kcal、たんぱく質9.3g、炭水化物24.5g、脂質0.5g、食物繊維8.6g となる。

Borlotti はこのほか、葉酸、鉄、マグネシウム、リン、カリウム、亜鉛、銅の供給源でもある。

着色した種皮には、フラボノイドや縮合型タンニンを含む各種ポリフェノールが含まれる。これらのフェノール化合物の一部は、浸水や加熱の際に水中へ移行する。

⚠️ レクチン

他の乾燥 Phaseolus vulgaris と同様に、borlotti は生または加熱不十分な状態で食べてはならない。

豆には phytohaemagglutinin(PHA) を含むレクチンが存在する。特に red kidney bean では高濃度で知られるが、加熱不十分な common bean によるリスクは赤いんげん豆だけに限られない。

EFSA の2026年評価では、“Borlotti or other common beans (dry)” が活性レクチンへの曝露評価の対象として明示されている。

レクチン活性を十分に低下させるため、EFSA は6〜12時間浸水して豆を十分に吸水させ、浸水水を捨てた後、新しい水で100℃にて少なくとも30分間沸騰させ、その後も完全にやわらかくなるまで加熱する方法を推奨している。

したがって、乾燥 borlotti を十分な高温加熱なしに、最初からスロークッカーだけで調理するのは避けるべきである。

⚠️ 反栄養成分

乾燥 borlotti には、フィチン酸、タンニン、プロテアーゼ阻害因子などの天然の反栄養成分が含まれる。

浸水と十分な加熱によって、これらの成分の多くは含有量または活性が低下する。

乾燥 borlotti は、密閉またはしっかり閉じた容器に入れ、乾燥した涼しい暗所で、熱・湿気・害虫を避けて保存する。

保存温度を**21℃**に固定する必要はない。基本原則は、涼しい・乾燥・暗所・密閉である。

良好な風味と調理性を保つためには、おおむね1〜2年以内に使用するのが望ましい。適切に保存すればそれ以上の期間でも利用できるが、古くなるにつれて種子は乾燥が進み、浸水や加熱により長い時間を要するようになる。

加熱済みの borlotti は、2時間以内に冷却し、密閉容器に入れて冷蔵庫で約3〜5日保存する。

Borlotti はイタリア語の複数形で、単数形は borlotto である。

乾燥豆に見られる鮮やかなワインレッドの斑紋は、加熱すると大部分が消える。これは色素の正常な変化であり、品質低下を示すものではない。

Fagiolo di Lamon della Vallata Bellunese IGP は公式に Borlotto 系統に分類され、模様や種皮の厚さが異なる複数の地域エコタイプを含む。

Borlotti と pinto は、同じ common bean でも主要な遺伝的背景が異なる。cranberry はアンデス系遺伝子プールに属する一方、pinto は主に中米系遺伝子プールの代表的な market class である。

Roman / Romano bean という名称は注意が必要である。北米では cranberry bean を指す場合がある一方、Romano bean は平たい莢を食用とする green bean / Italian flat bean の名称としても広く使われる。

日本語の うずら豆 も borlotti と自動的に同一視すべきではない。日本には独自のうずら豆系統・品種があり、輸入 borlotti が日本の消費者に分かりやすい名称として うずら豆 と表示される場合がある、という関係である。

Sources

Kew Science — Phaseolus vulgaris L.
Plants of the World Online — Phaseolus vulgaris

Frontiers in Plant Science — common bean market classes and genetic pools
Developing market class specific InDel markers in Phaseolus vulgaris

Agronomy — Borlotti beans in Northern Italy and Andean ancestry of European common beans
The Borlotti Case Study in Northern Italy

Qualigeo — Fagiolo di Lamon della Vallata Bellunese IGP
Fagiolo di Lamon della Vallata Bellunese IGP

Piemonte Agri Qualità — Fagiolo di Saluggia
Fagiolo di Saluggia

Regione Veneto — Pasta e fagioli alla veneta
Pasta e fagioli alla veneta

La Cucina Italiana — Pasta e fagioli
Pasta e fagioli — La Cucina Italiana

文部科学省 — 日本食品標準成分表:うずら豆
食品成分データベース — うずら豆

農林水産省 — いんげん豆の分類
農産物規格規程 — いんげん

農林水産省 — 品種登録:福うずら
品種登録データベース — 福うずら

EFSA — Lectins in undercooked beans and safe preparation guidance
Lectins in food: undercooked beans pose health risk

EFSA Journal — Risks for human health related to plant lectins in food
EFSA scientific opinion on plant lectins

Colorado State University Extension — Cooking Dry Beans
Cooking Dry Beans

Colorado State University Extension — Cooking with Dry Beans and Other Pulses
Cooking with Dry Beans and Other Pulses

Utah State University Extension — Storing Dry Beans
Storing Dry Beans

Scientific study — polyphenols in Borlotti beans during soaking and cooking
Starch Digestion Enhances Bioaccessibility of Polyphenols from Borlotti Beans