ブラウンレンズ豆 / Brown Lentil

🇯🇵 日本語: ブラウンレンズ豆
🇬🇧 English: Brown Lentil
🔬 学名: Lens culinaris Medik.
🌿 科名: Fabaceae(マメ科)
Lens culinaris Medik. という学名は、現在も農学、食品科学、国際流通で広く使用されている。一方、Kew Plants of the World Online の現在の分類では、accepted name である Vicia lens (L.) Coss. & Germ. のシノニムとして扱われている。

🌍 主な料理圏・利用地域: 南アジア、エジプトおよび中東、ドイツおよび中央ヨーロッパ、スペイン、イタリア、北アメリカ。
ブラウンレンズ豆は、最も汎用性の高いレンズ豆のタイプの一つである。スープ、ダール、煮込み料理、サラダ、穀類を使った料理、付け合わせなどに幅広く利用される。

名称に関する重要な区別

Brown lentil は、独立した植物種でも単一の栽培品種でもない。 茶色、灰褐色、または緑がかった褐色の種皮をもつ全粒レンズ豆を広くまとめた、商業上・料理上のカテゴリーである。
このカテゴリーには、さまざまな品種や地域系統が含まれる。特に明確な例の一つがスペインの Pardina で、これは小粒のブラウンレンズ豆であり、保護地理的表示 Lenteja de Tierra de Campos IGP の基礎となるタイプである。公式規格では、栗色または灰褐色の小粒レンズ豆で、黒い斑点やマーブル模様が見られる場合があるとされている。

基本情報

ブラウンレンズ豆は、種皮を残した小〜中粒の平たいレンズ形の種子である。色は淡褐色、灰褐色、濃褐色まで幅があり、場合によっては緑がかった色調、斑点、マーブル模様をもつ。
種皮の色は遺伝的背景や品種によって異なり、褐色であること自体が独立した亜種を意味するわけではない。
加熱すると色はやや濃くなるか、より均一な色調になる。皮を除いた赤レンズ豆や黄レンズ豆と異なり、全粒のブラウンレンズ豆は種皮を保持しているため、加熱後も粒の形を比較的よく保つ。

この記事は現在、一部未完成のため、内容を随時追加・更新しています。

レンズ豆は、人類が最も古くから栽培してきた作物の一つである。栽培化は約8,000〜10,000年前の南西アジア、いわゆる肥沃な三日月地帯で始まったと考えられている。

栽培レンズ豆の野生祖先としては、伝統的に Lens culinaris subsp. orientalis が挙げられてきた。現在の Kew の分類では、この系統は Vicia orientalis として扱われている。

ゲノム研究では、初期の栽培化はおおむね現在のトルコ南部からヨルダンにかけての地域と関連づけられているが、起源を地図上の一地点に限定することはできない。

南西アジアから、レンズ豆は地中海沿岸、ヨーロッパ、北アフリカ、南アジア、中央アジアへ広がり、さらに後の時代には北アメリカの重要な商品作物となった。

現在、レンズ豆は主に温帯から比較的乾燥した地域で栽培されている。

FAOSTAT の2024年データでは、レンズ豆全体の主要生産国はカナダ、インド、オーストラリアであり、世界生産に占める割合は、カナダ約31%、インド約23%、オーストラリア約16%であった。

カナダは現在も、商品用レンズ豆の重要な生産国・輸出国である。2024年の生産量は約240万トンで、その大部分をサスカチュワン州が占めた。

ブラウン系およびそれに近い全粒タイプのレンズ豆は、特にスペイン、ドイツを含む中央ヨーロッパ、イタリア、南アジア、中東、北アフリカで広く利用されている。

Pardina — スペイン

カスティーリャ・イ・レオン州の Tierra de Campos と特に結びつきの強い、小粒のブラウンレンズ豆である。

保護地理的表示 Lenteja de Tierra de Campos IGP は、この Pardina タイプに属する。種子は小さく、褐色から灰褐色で、黒い斑点が見られる場合もある。

Tellerlinsen — ドイツ

独立した植物学上の品種ではなく、ドイツ語圏で使われる比較的大粒のレンズ豆の伝統的カテゴリーである。

色は通常、褐色、緑褐色、黄褐色など。ドイツでは特に Linsensuppe や Linseneintopf によく使われる。

Whole Masoor — 南アジア

褐色または灰褐色の種皮を残した全粒レンズ豆で、内部の子葉は通常オレンジ色から赤橙色である。

より粒感のある masoor dal に使われ、種皮を除去して割ると、赤橙色の split masoor dal になる。

Castelluccio — イタリア

Lenticchia di Castelluccio di Norcia IGP は、薄い種皮をもつ非常に小粒のイタリア産レンズ豆である。

色は斑入りの緑色から淡褐色まで幅があるため、brown-lentil に近い料理上のタイプとして扱うことはできるが、厳密には「純粋なブラウンレンズ豆の品種」ではない。

ブラウンレンズ豆は、ほどよく濃厚な土を思わせる風味と豆らしい味をもち、ほのかなナッツ香を感じることもある。

加熱すると内部はやわらかく、ややクリーミーになる。一方、種皮が残っているため、皮を除いた赤レンズ豆や黄レンズ豆よりも粒の形を保ちやすい。

煮崩れやすさは品種によって大きく異なる。小粒の Pardina や粒の締まった地域系統は比較的形を保ちやすいが、大粒の一般的な brown lentils は長時間加熱すると徐々にやわらかくなり、部分的に崩れることがある。

ブラウンレンズ豆は、スープ、濃厚な煮込みスープ、ダール、野菜や肉の煮込み料理、サラダ、米・穀類料理、詰め物、付け合わせ、ピューレ状の料理などに幅広く利用される。

相性のよい食材は、玉ねぎ、ニンジン、セロリ、にんにく、トマト、ジャガイモ、ほうれん草やその他の葉物野菜、キャベツ、カボチャ、キノコ、米、ブルグル、パスタ、燻製肉、ソーセージ、ベーコン、ラム肉などである。

ハーブやスパイスでは、ローリエ、タイム、マジョラム、パセリ、クミン、コリアンダー、黒胡椒、パプリカ、ターメリック、ショウガ、にんにくがよく合う。

酸味のある食材では、酢、レモン、トマトとの相性がよい。

🇪🇬 Koshary — エジプト

エジプトを代表する国民的な日常食の一つである。

カイロで広く知られる基本的なスタイルでは、米、ブラウンレンズ豆、パスタ、ヒヨコマメ、トマトとにんにくのソース、カリカリに揚げた玉ねぎを組み合わせる。

ただし地域差があり、アレクサンドリアなどでは黄レンズ豆を使う場合もある。そのため、brown lentil との結びつきは特にカイロ型の koshary に強い。

🇮🇳 Whole Masoor Dal — 南アジア

sabut masoor を、玉ねぎ、トマト、にんにく、ショウガ、各種スパイスとともに煮込むダール料理である。

皮を除いて割った赤い masoor dal と比べると、全粒タイプはより土を思わせる風味が強く、種皮がしっかりしており、粒の形を保ちやすい。

🇩🇪 Linsensuppe / Linseneintopf — ドイツ・中央ヨーロッパ

褐色系の Tellerlinsen は、根菜、ジャガイモ、ベーコン、燻製肉、ソーセージなどと合わせた濃厚なスープや煮込み料理に伝統的に使われる。

ドイツ料理では、Tellerlinsen はLinsensuppe や Linseneintopf に最も一般的に使われるタイプの一つである。

🇮🇹 Zuppa di lenticchie di Castelluccio — ウンブリア

Lenticchia di Castelluccio di Norcia IGP を使う伝統的なスープである。使用されるレンズ豆は小粒で、緑色から褐色まで混じった地域特有の外観をもつ。

種皮が薄いため浸水を必要とせず、比較的短時間で加熱でき、粒の形も保ちやすい。

伝統的な組み合わせでは、玉ねぎ、ニンジン、セロリ、にんにく、トマト、各種ハーブなどが使われる。

🇪🇸 Pardina を使う料理 — スペイン

Pardina は、小粒で種皮が比較的やわらかく、加熱後も形を保ちやすいため、スペインのスープや煮込み料理で高く評価されている。

Lenteja de Tierra de Campos IGP は、カスティーリャ・イ・レオン州の地域保護産品であり、ヨーロッパにおける代表的なブラウンレンズ豆タイプの一つである。

調理前にレンズ豆を選別し、小石、植物片、傷んだ種子を取り除いてから冷水で洗う。

浸水

ほとんどのブラウンレンズ豆では必要ない。

レンズ豆は多くの乾燥豆よりも粒が小さく、加熱中に比較的すばやく吸水する。Colorado State University Extension でも、レンズ豆は通常、調理前の浸水を必要としないとされている。

大粒のドイツ産 Tellerlinsen はやや例外的で、浸水なしでも調理できるが、事前に浸水すると加熱時間を大きく短縮できる。

ゆで方

乾燥レンズ豆 1に対して、水またはブイヨンを約2.5〜3の割合で使用する。

沸騰したら火を弱め、静かに煮立つ程度の火加減で加熱する。

一般的な小〜中粒のブラウンレンズ豆では、加熱時間の目安は20〜30分。より大粒で硬めのタイプでは30〜45分程度かかり、浸水していない大粒の Tellerlinsen では最長で約1時間必要になる場合もある。

サラダや koshary に使う場合は、十分に火が通りながらも粒の形と軽い弾力が残る段階で火から下ろす。スープやダールでは、より長く加熱してやわらかく仕上げてもよい。

酢や大量のトマトなど酸味の強い材料は、特にやわらかい仕上がりを求める場合、レンズ豆がある程度やわらかくなってから加える方がよい。

Brown lentils の栄養価は、他の全粒の栽培レンズ豆とおおむね同様である。具体的な数値は、品種、栽培条件、加工方法によって異なる。

USDA データでは、乾燥レンズ豆100gあたりおおよそ、352kcal、たんぱく質24.6g、炭水化物63.4g、脂質1.1g、食物繊維10.7gとされている。

加熱後は吸水によって重量が増えるため、100gあたりの値は大きく低下し、ゆでたレンズ豆では約116kcal、たんぱく質9.0g、炭水化物20.1g、脂質0.4g、食物繊維7.9gとなる。

ゆでたレンズ豆は、葉酸、鉄、マグネシウム、リン、カリウム、亜鉛、銅の供給源でもある。USDA データでは100gあたり、葉酸約181µg、鉄3.33mg、マグネシウム36mg、カリウム369mgが示されている。

ポリフェノール

全粒レンズ豆に含まれるフェノール化合物のかなりの割合は、種皮に存在する。特に、タンニンやその他のポリフェノールが種皮に集中している。

種皮を除去するとタンニン含有量は大きく低下する。そのため、全粒の brown lentil と皮を除いた split lentil では、食感や色だけでなく、フェノール化合物の組成にも違いがある。

⚠️ 生の種子と反栄養成分

乾燥レンズ豆は生食用ではない。豆類に一般的な反栄養成分として、トリプシン阻害因子、キモトリプシン阻害因子、フィチン酸、タンニン、レクチンなどを含む。タンニンは主に種皮に集中している。

十分な加熱によって、熱に弱い反栄養成分の活性は大きく低下し、たんぱく質の消化性も改善する。

一方、レンズ豆には red kidney bean で問題となるような高濃度のフィトヘマグルチニンによるリスクは一般にない。そのため、一部の Phaseolus vulgaris で推奨されるような、調理開始時に10分間強く沸騰させる特別な工程は通常必要とされない。

⚠️ アレルギー

レンズ豆アレルギーは存在し、特に地中海沿岸地域やアジアでよく報告されている。

知られている主なアレルゲンたんぱく質には、**Len c 1(vicilin)、Len c 2、Len c 3(lipid transfer protein)**がある。なかでも Len c 1 は、主要なレンズ豆アレルゲンの一つとしてよく研究されている。

他の豆類との交差反応も起こりうる。特にヒヨコマメやエンドウとの交差反応が知られている。

Brown lentil はアレルギー学的に別種の食品ではなく、他の栽培レンズ豆と同じ基本的なアレルギーリスクをもつ。

乾燥したブラウンレンズ豆は、密閉またはしっかり閉じた容器に入れ、乾燥した涼しい暗所で、直射日光・熱・湿気・害虫を避けて保存する。

保存温度を**21℃**に固定する必要はない。基本原則は、涼しい・乾燥・暗所・密閉である。

色、風味、調理性を良好に保つためには、おおむね12か月以内に使用するのが望ましい。適切に保存すればそれ以上の期間でも利用できるが、時間の経過とともに色、吸水性、やわらかくなるまでの時間が徐々に変化する。

加熱済みのレンズ豆は、密閉容器に入れて冷蔵し、約3〜5日を目安に保存する。

Brown lentil は植物学上の亜種ではなく、色と流通上の分類に基づくカテゴリーである。異なる地域のブラウンレンズ豆は別の栽培品種に属することがあり、粒の大きさ、風味、加熱時間も大きく異なる場合がある。

種皮の色と内部の子葉の色は必ずしも一致しない。 種皮は緑、褐色、黒、斑入りなどさまざまだが、内部の子葉は赤、黄、緑などの場合がある。

そのため whole masoor は外側が褐色でも、種皮を除去すると内部の鮮やかなオレンジ色の子葉が現れる。

Pardina は単に小粒のブラウンレンズ豆を指す一般名ではなく、明確な商業タイプである。Lenteja de Tierra de Campos は、EU の IGP(保護地理的表示)として正式に保護されている。

Laird はブラウンレンズ豆ではなく、グリーンレンズ豆である。 1978年に登録された初期のカナダ産 Laird は、大粒で鮮やかな緑色の種皮をもつことで知られる。

Castelluccio も厳密には brown lentil ではない。 色は斑入りの緑色から淡褐色まで自然に変化し、この不均一な外観そのものが製品の特徴である。

Puyensis を「Puy 緑レンズ豆の正式な亜種」として扱うのは適切ではない。 現在の Kew taxonomy では、Vicia lens の accepted subspecies として subsp. lens と subsp. lamottei が扱われており、独立した accepted taxon としての puyensis は認められていない。

ブラウンレンズ豆は、エジプトの koshary で特に重要な構造的役割をもつ。米、パスタ、ヒヨコマメと並ぶ独立した主要構成要素として加えられ、スープやソースの中に完全に溶け込む使い方ではない。特にカイロで広く知られるタイプの koshary は、brown lentils を基本材料の一つとしている。

Kew Science — Lens culinaris Medik.
Plants of the World Online — Lens culinaris

Kew Science — accepted taxonomy: Vicia lens
Plants of the World Online — Vicia lens

Frontiers in Plant Science — lentil domestication and spread
The History of Lentil Domestication and Spread

European Union — Lenteja de Tierra de Campos PGI specification
Lenteja de Tierra de Campos — EUR-Lex

Ministerio de Agricultura de España — Lenteja Pardina de Tierra de Campos
Lenteja pardina de Tierra de Campos

Canadian Food Inspection Agency — Laird lentil and lentil biology
The Biology of Lens culinaris Medikus

Canadian Grain Commission — lentil classes, types and seed colours
Lentils: Classes, Types and Varieties

Canadian Grain Commission — Quality of Western Canadian Lentils
Quality of Western Canadian Lentils 2024

Qualigeo — Lenticchia di Castelluccio di Norcia IGP
Lenticchia di Castelluccio di Norcia IGP

La Cucina Italiana — Zuppa di lenticchie di Castelluccio di Norcia IGP
Zuppa di lenticchie di Castelluccio

Experience Egypt — Egyptian gastronomy and Koshary
Experience Egypt — Gastronomy

NDR — Tellerlinsen, Linsensuppe and lentil cooking
Linsen kochen: Suppe, Salat und weitere Gerichte

Colorado State University Extension — lentil preparation and cooking
Cooking Dry Beans

USDA FoodData Central — food composition database
USDA FoodData Central

PMC — nutritional quality and antinutrients of lentils
Protein Biofortification in Lentils Toward Human Health

PMC — effects of dehulling and cooking on lentil nutrients and antinutrients
Effect of Dehulling, Germination and Cooking on Lentil

PubMed — Len c 1, major lentil allergen
Len c 1, a Major Allergen and Vicilin from Lentil Seeds

PubMed — lentil allergen profile
Lentil Allergens Identification and Quantification